宵祭り
「ごめんな。他の人を誘ってくれるか?」
…まただ。
あたしはガウリイに気づかれないように、そっとため息をついた。
これで何人目だろうか。
あと何回繰り返せば、明日になるのだろうか。
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今あたし達がいるとある村では、年1回の収穫祭が行われていた。
村中の人が豪華な料理を用意し、この日だけの服を着て、音楽を奏で、それにのせて舞っている。
宿屋のおばちゃんがあたしにも服を…と言ってくれたのだが、今夜は盗賊いぢめに行こうと思っていたので断ったのだ。
ガウリイは勧められるままに受け取っていたけど。
…これがまた似合うんだわ。
「あ…あの…すみませんっ…その……よければ一緒に踊ってくれませんか…?」
…あー、また来た…
祭り服を着た女性がガウリイに声をかけてきた。
「ごめんな。他の人を誘ってくれるか?」
――ふぅ…
多分、女性が声をかけた数と、ガウリイが断った数と、あたしが落としたため息の数を足したら余裕でこの村の人口くらいなっちゃうでしょうね…
あたしは、そんなことをぼんやり考えながら料理をむさぼっていた。
……なんだかなぁ……
せっかく盗賊いぢめに行こうと思ってたのに、そんなのはどうでもよくなってきた。
それよりも、今この時がとてもやるせなくて、自称あたしの保護者が凄く気になった。
女性に話しかけられる度に、同じ言葉を、同じ微笑で言う彼。
それを見る度に、安心するような、嫉妬するような複雑な気持ちになるあたし。
――胸が、痛い。
なんだか分からない感情を振り払うように、あたしは料理を食べ続けていた。
……これって、ヤケ食いかな……
「おいリナ。そんなに食べるとふとっちまうぞ。胸以外が」
「胸は余計よっ!!それよりガウリイ、あんたさっきからずぅっとモテモテねぇ〜。選びたい放題じゃないの」
「いや、選ぶ気なんてないさ。踊る気もない」
「あっそ」
気のない返事をするあたしの隣に、ガウリイが腰かける。
「………」
「………」
……もの凄くガウリイ君から視線を感じるんですけどぉ…?
ああああぁぁ、なんか目合わせたくないかも…。
「なぁ、リナ」
「…なによ」
「せっかくだから、お前さんも着替えてこいよ。きっと似合うと思うぜ」
「ええ、似合うでしょうねー。あたしは天才美少女魔道士だから♪でも別にこのままでいいわよ…って!何してんのよっ!!」
「何って。見てのとおり後ろから抱きついて宿屋に連れていこうとしてるv」
「嫌ーー!はずかしいじゃないっ!!このぉーー!!おろせぇぇぇ!!」
じたばたともがくが、まるで効果なし。
それどころか、逃がすまいとしてか腕に力がこもった…ような…。
うううぅぅ、ぐるじい…。
「おろしても、自分で宿屋に向かえるか?なんなら、オレがこのまま運んで…」
「わかったわよっ!向かえばいいんでしょう!向かえばっ!!だから今すぐおろせえぇぇぇっ!!」
「――了解。」
ひゃう!?ちょっ……いきなり耳元でささやくなぁぁっ!!
たぶん真っ赤になったであろう顔を隠すように、あたしはいそいそと宿屋に向かった。
う。やっぱりスカートって苦手かも…。
あ、でもこの髪飾りは可愛いわね。
ガウリイは…何て言ってくれるかな……。
「…お待たせ」
宿屋の玄関からちょこんと顔を出すと、案の定女の子に囲まれたガウリイがいた。
そいつは視線をこちらにむけると、一目散にあたしの元へ来た。
……ちょっと嬉しいかも…。
「おう、リナ。やっぱり何着ても似合うなー。天才なんちゃらだからか?」
「天才美少女魔道士。あんたほんと、長い単語覚えるの駄目ね」
「ああ。そうだな」
向けられた笑顔は、さっきまで他の人に見せていたものとは違っていた。
あたしだけに、見せてくれる笑顔。
あたしだけが、知っている笑顔。
あたしも……そんな笑みを浮かべているんだろうか?
「リナ、オレ達も踊ろうぜ」
「しょうがないわね。お相手してあげるわよ」
たまには、こんな日もいい…かな。
あとがき。
以上、モテモテガウリイ君でした(笑)
いやー、あの外見だったらそうなります…よね?(聞くな。)
でもって、リちゃんは気になって仕方がない、と。ガウリイは「踊る気ない」と言ってますが、あれは“リナ以外の人と”という意味です。
あと、リナが「ガウリイは…何て言ってくれるかな……。」と言ってましたが、
玄関から出てガウリイの状況を見たとたん、乙女な思考はどっかにいってしまったのです。
で、ガウリイがいつものボケをかますもんだから…ねぇ。(何)
そしてまた、微妙においしいとこで終わる姐御の小説なのでした(^^;)
すいません…。こういう終わり方好きなんです…。
因みに、題名の『宵祭り』とは、“祭りの前に行う小さな祭り”の事をいいます。
今回はリナさんとガウリイさんの仲の出来事…という意味とひっかけてつけてみました。