それぞれの想い (リナサイド)
「うあ。いきなり雨降ってくるし・・・」
その日は、よく晴れた朝だった。
いつもの通り、ガウリイと並んで歩く、次の街へと続く林道で。
日は、はや傾きかけ、そろそろお腹も減ってきた頃。
何の前触れもなく、雨が降ってきてしまった。
「リナ、どうするんだ?このままだと止みそうにないぞ。」
あいかわらず、あたしに頼って聞いてくる。
「そうねぇ、どっかで雨宿りでもしないと風邪ひくわね・・・。あっ!あそこなんてどう?」
指さした向こうに、木々の間から見え隠れする洞窟が見える。
あたし達は急ぎ足でそこへ向かった。
とりあえず火を起こし、体を乾かす。
「うーーん。いまいちだけど、仕方ないわね・・・」
持ち歩いている携帯食料をたべながらあたしはつぶやく。
「・・・・・・。」
「どしたの?ガウリイ」
なぜか静かなガウリイに気づいて、問いかけてみる。
「いや・・・な・・・」
焚き火に視線をおとしたまま言う。
「オレ、この間リナが空に飛んでいった時、凄く恐くなったんだ。」
「あ・・・あの時ね・・・」
まだ新しい記憶が思い出される。
ガウリイを、心の底から助けたいと思った事。その為なら、自分の命などいらないと願ったこと。
今まで形にならなかった想いが、形になっている事に気づいた日。
なんだか照れくさくて、本人には言ってはない。
言えるわけがない。
このままで十分満足だから。
いつまでもこうしていたいから。
「へぇ、ガウリイでも恐くなる時があるんだ。」
思った通りの事を口にしてみた。
いつだって、のほほんとしてる彼が。
あたしが弱気だと、いつでも背中を押してくれる彼が『恐い』だなんて。
「オレだって人間だぞ。恐くなる時だってあるさ・・・ま、いつもは口に出す事がないからな。」
そう言って苦笑する横顔が、なぜか哀しそうに見えたのは気のせいだろうか?
「リナが・・・遠くに行って・・・・・・届かない・・・凄く届かない所に行きそうで・・・置いて行かれそうな気がしたんだ・・・」
あ・・・・・・。
泣いてる・・・。
ガウリイが・・・。
髪で隠れてはいるけど、たしかに・・・。
「ガウリイ・・・?」
動揺しているのだろうか。
自分で声が震えているのが分かる。
「リナ。」
下を向いたままガウリイは言う。
「・・・ん?」
なるべく平静を装って言うあたし。
「もし・・・オレの剣が無くなっても・・・一緒に居てくれるか・・・?」
「・・・っな!何言ってんのよっ!剣はあたしが貰う約束なんだしっ、第一、無くなるなんてある訳無いじゃないっ!
そんな事っ!あんたがどっかに置き忘れて来ない限り大丈夫よっ!!」
あ・・・あれ・・・?
なんで・・・あたしも涙なんか・・・流してるの・・・?
・・・・・・・・・そっか・・・
あたしも、ガウリイと居たいから・・・
居る理由は、剣なんかじゃないから・・・。
「リナっ、泣いてるのか・・・?」
「・・・バカっ。さっきまで泣いてたのはどこのどいつよっ!・・・ったく。ほんっと、クラゲ・・・なんだから。」
「・・・ほんとだ。オレも泣いてた。」
そう言って、向き直ったガウリイの顔はいつも通りだった。
でも・・・
いつも、何気なく見ているはずのその顔が、ずっと懐かしく思えて・・・。
自分でも、どうしようも無いほど淋しくなって。
これから先、どうなるかなんて分からない。
だけど、ガウリイが居ない未来なんて来てほしくない。
そう思ったら、涙が止まらなくなってきて・・・。
「リナ・・・」
すぐ隣から、やさしい声がかかる。
でも、涙を止めようと必死なあたしには、どうゆう顔をしていたかは判らない。
ふと、あたしの肩に、ガウリイの大きな手がかかる。
「・・・しばらくこうしててやるから、好きなだけ泣いていいぞ。」
・・・・・・っ。
頭の上から聞こえてくる声で、さらに涙が出て来て。
あたしは、ほんのちょっと素直になって、彼の胸に体をあずけ、一晩中・・・泣いた。
あとがき。
ここで終わるのが良いのです(逃げ?)